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PUBLIC SECTOR / ARTICLE 14

自治体の生成AI調達は、仕様書の12項目で曖昧さを減らす。

自治体が生成AI・AIエージェントを調達する際に、目的、対象業務、データ、権限、品質、契約、出口戦略までを要件定義する実務手順と12の確認項目を解説します。

行政・政治11分で読める一次情報を明示
公開:2026年8月7日最終更新:2026年8月7日発行:株式会社ファーストイノベーション
自治体の生成AI調達要件をデータ・権限・品質・契約の観点で整理する青と銀の概念図
PUBLIC SECTOR / ARTICLE 14LUMINA COLUMN / 14

SHORT ANSWER

まず、結論から。

AI検索や生成AIが一部を引用しても意味が変わらないよう、最初にこの記事の結論を示します。

結論自治体の生成AI調達では、機能の多さよりも『何の業務を、誰が、どの情報で、どの責任分担で行い、何をもって受入れとするか』を検証可能な要件にすることが重要です。

調達仕様書は製品名や機能一覧から書き始めず、対象業務、扱う情報、利用者、判断を残す場所、評価方法、契約終了時のデータ取扱いまでを一つの運用として定義します。

対象カテゴリ行政・政治読了目安11主な対象自治体のDX・情報政策担当者/調達・契約・情報セキュリティ担当者/生成AI導入の業務主管課発行元株式会社ファーストイノベーション

KEY POINTS

この記事の、4つの要点。

導入判断や社内共有に使えるよう、重要点を先に確認できます。

  • 製品名ではなく、対象業務・利用者・入力情報・期待する成果から要件を定義する
  • 機能要件と同時に、権限、記録、品質確認、障害・事故対応などの非機能要件を決める
  • 入力・処理成果・出力の利用目的、保存、学習利用、権利帰属を契約で曖昧にしない
  • 受入れテスト、運用見直し、契約終了時の返却・削除・移行までを調達前に設計する

SCOPE FIRST

製品を選ぶ前に、業務の境界を決める。

最初に定義するのはAIの名称ではなく、どの課の、どの業務を、誰が使うかです。庁内文書の下書き、会議資料の要約、公開情報の検索補助、住民向け案内案の作成では、扱う情報も誤りの影響も異なります。対象業務ごとに、入力する資料、出力の利用先、人が最終確認する箇所を一枚に整理します。

デジタル庁の『行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(第2.0版)』は国の政府職員向けの規範で、地方公共団体にも必要に応じた参考利用を期待しています。同ガイドラインは、生成AIの利活用促進とリスク管理を表裏一体で進める考え方を示しており、自治体の要件整理でも有用な一次情報です。

ただし、国のひな形をそのまま転記しても、その自治体の業務要件にはなりません。情報セキュリティポリシー、個人情報の取扱い、文書管理、調達規程、既存システムとの接続条件を確認し、庁内の責任者が採否を判断します。

  • 対象業務と対象外業務を明記する
  • 利用者、承認者、運用責任者を役割で定める
  • 入力可能・禁止・要承認の情報区分を決める
  • AIが行う支援と、人が行う判断を分ける

TWELVE REQUIREMENTS

仕様書へ入れる、12の確認項目。

要件は『対応していること』だけで終わらせず、提案者が何を提出し、自治体がどう確認するかまで書きます。例えばアクセス制御なら、役割別権限、管理者操作、異動・退職時の停止方法、操作記録の確認方法を要求し、画面説明やテスト結果を裏付け資料とします。

デジタル庁第2.0版の調達チェックシートは、導入類型、プロジェクト段階、リスクレベルに応じた取捨選択・拡充を前提としています。以下はそれを自治体の初期整理へ落とし込んだ実務チェックリストであり、法定の統一様式ではありません。

  • 1. 目的・対象業務:現状の課題、利用場面、対象外、期待する成果
  • 2. 利用者・責任:利用者、管理者、業務責任者、最終承認者の分担
  • 3. 入力情報:入力可能な情報区分、禁止情報、マスキング、持込み手順
  • 4. データ取扱い:保存場所、処理地域、保存期間、学習利用、目的外利用
  • 5. 権限・認証:本人確認、最小権限、アカウント停止、管理者権限
  • 6. 記録・監査:操作・設定変更・出力確認の記録範囲、閲覧権限、保管期間
  • 7. 出力品質:対象業務別の評価データ、合否基準、出典表示、再現テスト
  • 8. 人の確認:送信・公開・行政判断前の確認者、差戻し、承認記録
  • 9. 安全対策:不正入力、権限外参照、有害出力、脆弱性への対策と更新
  • 10. 障害・事故対応:通知期限、初動、影響調査、復旧、再発防止、連絡体制
  • 11. 変更管理:モデル・機能・利用規約変更の通知、再評価、利用停止の判断
  • 12. 終了・移行:データ返却・削除、削除証跡、設定の引継ぎ、移行可能性

DATA & CONTRACT

データと成果物を、契約で分けて定義する。

生成AIでは、職員が入力する文書やプロンプト、入力から作られる中間データ、AIが生成する出力、職員が編集した成果物を分けて考えます。それぞれについて、利用目的、保存、学習への利用、第三者提供、権利帰属、契約終了後の扱いを確認します。『データは安全に管理します』という表現だけでは、判断に必要な条件が残りません。

デジタル庁第2.0版の契約チェックシートは、インプット、インプットの処理成果、アウトプット等の取決めを契約書または調達仕様書へ盛り込むことを検討する構成です。RAGを含む場合は、データベースだけでなく、文書を変換・分割する仕組み等を成果物に含めるのか、サービスとして提供するのかも検討事項としています。

自治体側は、ベンダーが利用する基盤サービスや再委託先も含め、契約条件の連鎖を確認します。重要事項は提案書だけに置かず、契約書、仕様書、サービス水準、運用手順のどこに拘束力を持たせるかを契約・法務担当と整理します。

  • 入力、処理成果、出力、編集後成果物の定義を分ける
  • 学習利用の有無と、認める場合の範囲・条件を明記する
  • 再委託先、基盤サービス、保存・処理場所を確認する
  • 契約終了時の返却、削除、削除証跡、移行支援を決める

EVALUATION

デモの印象ではなく、同じ課題で比較する。

提案評価では、各社へ同じ代表業務、同じ情報条件、同じ禁止事項を示し、回答の正確性だけでなく、根拠確認のしやすさ、権限管理、設定変更、記録、運用支援まで比較します。自由なデモだけでは、得意な場面だけが強調され、実運用との差を判断しにくくなります。

受入れ基準は、AIの正答率を一つの数字で固定するより、業務別に重大な誤り、許容できる誤り、人が補正できる範囲を定めます。法令、金額、日付、固有名詞、住民の権利に関わる内容は、回答の流暢さではなく、一次情報との一致と、人が確認できる仕組みを重視します。

費用比較は初期費用と月額だけでなく、利用者追加、モデル利用、データ整備、連携、研修、保守、監査、契約終了・移行にかかる条件を同じ期間で整理します。未確認の将来効果を点数化せず、現状値と検証期間中の記録から判断します。

  • 代表業務の共通シナリオと評価データを用意する
  • 重大な誤りと合否条件を業務主管課が定義する
  • 根拠、権限、記録、変更、支援体制を同じ尺度で比較する
  • 初期・運用・追加・終了の総費用と前提条件を揃える

IMPLEMENTATION STEPS

5段階で、安全に調達へ進む。

最初から全庁利用を前提にせず、代表業務を絞って要件と評価方法を作ります。小さく試す場合でも、検証環境で扱える情報、利用者、記録、終了条件を決め、試行だけが恒久運用になることを避けます。

契約後も、モデルや機能、利用規約、脅威、庁内業務は変化します。月次・四半期など固定の頻度だけでなく、重大な仕様変更、事故、対象業務追加を再評価の起点にします。使われない機能を残すこともコストとリスクになるため、利用状況と業務効果を見直します。

  • 1. 現行業務と情報区分を整理し、対象・対象外を決める
  • 2. 業務主管、DX、セキュリティ、個人情報、契約の担当で要件を確認する
  • 3. 共通シナリオで提案・試行を評価し、根拠を記録する
  • 4. 受入れ基準を満たした範囲だけで運用を開始し、利用者へルールを周知する
  • 5. 変更・事故・業務追加を契機に再評価し、継続・改善・停止を判断する

FREQUENTLY ASKED QUESTIONS

よくある疑問を、短く正確に。

記事の要点を、質問と回答の形でも確認できます。

Q01

国の生成AI調達ガイドラインは、地方自治体にもそのまま適用されますか?

デジタル庁第2.0版は国の政府職員向けの規範で、地方公共団体には必要に応じた参考利用が期待されています。自治体では自らの条例、規程、情報セキュリティポリシー、調達手続に照らして採用範囲を判断します。

Q02

PoCや無料トライアルなら、調達要件は後から決めてもよいですか?

試行でも、扱う情報、利用者、利用期間、記録、事故時の連絡、終了時の削除を先に決めます。本番より範囲を限定できますが、条件を未定のまま始めることは避けます。

Q03

正答率が最も高いサービスを選べばよいですか?

一つの正答率だけでは判断できません。対象業務に即した共通データで、重大な誤り、根拠確認、権限、記録、変更管理、運用支援、総費用を合わせて評価します。

Q04

生成AIの入力を学習に使わないことだけ確認すれば安全ですか?

十分ではありません。保存・処理場所、保存期間、目的外利用、再委託、アクセス権、操作記録、削除、事故対応なども確認します。具体条件は提供環境と契約ごとに異なります。

Q05

AIエージェントに外部システム操作をさせる場合、何を追加確認しますか?

実行権限を必要最小限にし、対象操作、承認が必要な処理、実行記録、停止方法、誤操作時の復旧、連携先の責任分担を追加で定義します。重要処理は人の承認を残します。

PRIMARY SOURCES

判断の基準にした、公式情報。

制度・製品・提供条件は変更されるため、リンク先の最新表示も併せて確認してください。

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