PUBLIC SECTOR / ARTICLE 40

自治体のAI議事録作成|録音・文字起こし・原音照合・公開の実務設計

自治体がAIで会議録を作るときに、録音、文字起こし、原音照合、非公開情報の確認、正式版の承認を分ける方法を解説します。

行政・政治13分で読める参考資料も掲載
円形の会議席から録音波形が文字起こし文書へ進み、複数の確認ゲートを経て正式文書になるイメージ
原音、未確認の文字起こし、編集案、承認済みの正式版を分けて確認するイメージLUMINA COLUMN / 40
この記事の目次

SHORT ANSWER

まず、結論から。

結論AI議事録を安全に使う要点は、文字起こしを正本にしないことです。会議前に録音と利用目的を決め、会議後は原音と照合し、決定事項・保留事項・担当・期限を確認します。個人情報や非公開情報を処理し、権限を持つ人が承認した版だけを正式な会議録として保存・公開します。

AIは録音から文字を起こし、要点を整理できますが、聞き間違い、発言者の取り違え、要約による条件の脱落は残ります。原音、未確認の文字起こし、編集案、承認済みの正式版を分け、公開前に担当者が照合します。

主な対象

自治体の会議主管課・事務局・議会事務局DX・情報政策・情報セキュリティ・個人情報保護担当者会議録の確認・承認・公開を担当する職員

KEY POINTS

この記事の、4つの要点。

  • 原音、未確認の文字起こし、編集案、承認済みの正式版を別の状態として管理する
  • 録音前に参加者への案内、対象範囲、利用目的、保存先、保存期間、公開範囲を決める
  • 発言者、固有名詞、数値、否定表現、決定・保留、担当・期限を原音と照合する
  • 個人情報や非公開情報を確認し、権限を持つ人が承認した版だけを保存・公開する

SEPARATE THE RECORDS

録音と文字起こしと正式版を、同じ記録にしない。

会議が終わると、録音ファイル、AIによる文字起こし、要約、職員が整えた会議録ができます。見た目はどれも会議の内容を表しますが、確認状況と役割は同じではありません。AIの文字起こしは、聞き取りにくい発言、似た名称、専門用語、数字、否定表現を誤ることがあります。要約では、条件や少数意見が短くなりすぎることもあります。

最初に、原音、未確認の文字起こし、編集案、承認済みの正式版という状態を分けます。ファイル名だけに頼らず、会議名、開催日時、版、作成者、確認者、承認状態を記録します。検索やAIの参照対象には、原則として承認済みの版を使い、未確認の文字起こしが正式な回答根拠へ混ざらないようにします。

志木市は、録音した音声ファイルを自動で文字起こしし、生成AIと連携して要約する会議録作成支援システムの利用を公表しています。これは確認できる活用例ですが、公開ページは個々の会議における正確性や承認手順を保証するものではありません。各自治体は、自らの文書管理、情報公開、個人情報保護、会議運営の規程に合わせて正式版を確定します。

原音
発言を確認するための一次記録。録音範囲と保存条件を決める
文字起こし
AIの処理結果。照合が終わるまで未確認と表示する
編集案
読みやすく整えた下書き。修正理由と確認箇所を残す
正式版
所定の確認と承認を終え、保存・公開できる版

BEFORE RECORDING

録音ボタンを押す前に、目的と扱いを決める。

会議録を早く作るために、すべての会議を同じ条件で録音する必要はありません。公開会議、庁内会議、住民相談を含む会議、採用や人事を扱う会議では、参加者、情報、公開範囲が異なります。録音の目的、対象となる発言、参加者への案内、利用するサービス、保存先、閲覧者、保存期間、削除方法を会議前に確認します。

文字起こしサービスへ音声を送る場合は、どの環境で処理されるか、入力した音声や生成された文章が別の目的で利用されないか、再委託や外部送信、ログ、削除の条件を契約・規約で確認します。確認できない環境へ個人情報や非公開情報を含む録音をアップロードしません。必要に応じて、録音しない議題、録音を一時停止する場面、別の議事メモで残す範囲を決めます。

個人情報保護委員会は、行政機関等が生成AIサービスへ個人情報を入力する場合、利用目的のための必要最小限かを確認し、出力以外の目的で扱われる場合の条件にも注意するよう示しています。音声も、氏名を後で消せばよいと考えず、録音・送信する前に必要性を判断します。

  • 会議の種類と、会議録を作成・公開する目的
  • 録音する議題、録音しない議題、途中停止の条件
  • 参加者への案内と、質問・訂正を受ける窓口
  • 音声と文字データの処理環境、閲覧者、保存期間、削除方法
  • 障害、誤送信、対象外情報の混入が起きたときの停止先

VERIFY AGAINST AUDIO

全文を同じ力で直すより、誤りの影響が大きい箇所から照合する。

原音との照合は、誤字を整える作業だけではありません。誰の発言か、賛成か反対か、数値と単位、日付、制度名、固有名詞、条件、例外、決定か提案か、担当者と期限が正しく残っているかを確認します。『実施する』と『検討する』、『対象』と『対象外』の取り違えは、短い一語でも意味を変えます。

確認担当者は、AIが低い確度を示した箇所だけでなく、行政判断や住民への案内に使われる箇所を優先して原音へ戻ります。発言が重なった場面、雑音がある場面、画面共有や配付資料を指している場面、複数の数字が続く場面には印を付けます。聞き取れない内容を前後から推測して埋めず、発言者や主管課へ確認し、未確認ならその状態を残します。

デジタル庁のガイドライン第2.0版は、生成AIの対象をテキストだけでなく音声や画像へ広げ、利用に伴うリスクを管理する考え方を示しています。政府向けのガイドラインを自治体へそのまま義務として当てはめるのではなく、音声から作られた出力も人の確認なしに正式記録へしない、という実務上の参考にします。

発言者
話者の切替え、同時発言、代理説明を確認する
事実
氏名、組織名、制度名、数値、単位、日付を資料と照合する
意味
否定、条件、例外、賛否、決定・提案・保留を確認する
行動
担当部署、期限、次回確認、住民への案内を確認する
不明
推測で補わず、確認先と確認期限を残す

DECISIONS & PUBLICATION

発言を並べるだけでなく、決定と公開可否を人が確定する。

会議録の利用者が知りたいのは、誰が何を言ったかだけではありません。何が決まり、何が保留され、誰がいつまでに確認するかも重要です。AIの要約が複数の発言を一つの結論へまとめると、異論や留保、前提条件が見えにくくなります。決定事項、継続審議、参考意見、担当、期限を分け、議長や主管課など所定の責任者が確認します。

公開前には、個人情報、非公開情報、第三者の権利、セキュリティ上の情報、未確定の政策案などが含まれていないかを確認します。伏字や要約を行った場合は、何を根拠にどの版で処理したかを記録します。公開用に編集した版を内部の正式記録へ上書きせず、内部保存版と公開版の関係を追えるようにします。

AIへ公開可否を最終判断させません。適用される条例、規則、会議の設置根拠、公開基準、文書管理の手順は自治体や会議によって異なります。所管部署、情報公開、個人情報保護、法務など、必要な担当へ確認し、公開したURL、公開日、承認者、訂正窓口を残します。

  • 決定事項と、まだ検討中の案を分ける
  • 反対意見、条件、例外、保留理由を消さない
  • 担当部署、期限、次の確認方法を確定する
  • 内部保存版と公開版を分け、編集箇所を追えるようにする
  • 訂正依頼を受けたときの確認者と公開差替え手順を決める

ACCEPTANCE CHECK

導入テストは、正しい音声だけで終えない。

導入前は、静かな会議室で一人ずつ話す録音だけで試さないようにします。似た名称、同時発言、方言、固有名詞、数値、短い相づち、オンライン参加、雑音、録音停止、長時間会議を含むテストを行います。誤りが起きたときに原音へ戻れるか、未確認箇所を表示できるか、別会議のデータが混ざらないかも確認します。

受入れ条件には、録音の案内、対象外議題、処理環境、アクセス権、照合項目、承認、保存、公開、訂正、削除、障害時の代替手順を含めます。正答率の一つの数字だけで合否を決めず、決定事項や個人情報を誤ったときの影響も評価します。

運用開始後は、文字起こし件数だけでなく、原音へ戻った箇所、発言者の修正、固有名詞・数値の修正、決定事項の差戻し、非公開情報の検出、公開後の訂正を確認します。ここで示す方法は一般的な活用例であり、特定自治体の導入実績や削減効果を示すものではありません。会議の種類と自治体の規程に合わせて、確認工程を調整します。

  • 原音、未確認の文字起こし、編集案、正式版を識別できる
  • 話者、固有名詞、数値、否定、決定・保留を原音と照合できる
  • 個人情報・非公開情報を公開前に確認し、処理理由を残せる
  • 承認前の版が検索、回答、公開ページへ出ない
  • 訂正時に原音と版履歴へ戻り、公開版を正しく差し替えられる
  • サービス停止時も、会議録作成と承認を別の手順で続けられる

FREQUENTLY ASKED QUESTIONS

この記事のよくある質問。

Q01

AIの文字起こしは、そのまま会議録として保存できますか?

原則として未確認の下書きとして扱います。発言者、固有名詞、数値、否定表現、決定・保留、担当・期限を原音や配付資料と照合し、所定の承認を終えた版だけを正式な会議録として保存します。

Q02

会議の録音は、参加者へ知らせなくてもよいですか?

録音の可否や案内方法は、会議の性質、自治体の規程、扱う情報によって異なります。録音前に目的、利用範囲、保存先、閲覧者、保存期間、問い合わせ・訂正の窓口を確認し、必要な案内を行います。

Q03

発言者を自動判定できれば、人の確認は不要ですか?

不要にはなりません。同時発言、席替え、オンライン参加、短い相づちなどで話者が入れ替わることがあります。責任や意思決定に関わる発言は、原音と会議の参加記録を使って確認します。

Q04

会議録の要約だけを公開すれば、確認を減らせますか?

要約は短い分、条件、例外、異論、保留事項が落ちやすくなります。公開目的に合うかを確認し、決定事項と検討中の案を分け、個人情報・非公開情報・第三者の権利も所定の担当者が確認します。

Q05

聞き取れない箇所は、AIに推測させてもよいですか?

推測を事実として埋めません。時刻と不明箇所を示し、発言者や主管課へ確認します。確認できない場合は未確認であることを残し、意思決定へ影響する内容なら正式版の承認を止めます。

Q06

公開後に発言の誤りが見つかったら、どう対応しますか?

原音、編集履歴、承認記録へ戻り、誤りと影響範囲を確認します。所定の承認を経て公開版を訂正し、訂正日、理由、差替えた版、確認者を記録します。個人情報や事故が関わる場合は、組織の事故対応手順へ切り替えます。

PRIMARY SOURCES

判断の基準にした、公式情報。

制度・製品・提供条件は変更されるため、リンク先の最新表示も併せて確認してください。

CONTACT LUMINA

仕事に合うAIを、一緒に考えます。

導入目的、使いたい業務、情報管理、費用まで、まだ具体的でない段階からご相談いただけます。
無料で相談する